在宅医療について

南記念クリニック 南  圭祐

 皆さんは在宅医療という言葉を聞いたことがありますか?
 在宅医療とは「医師が患者の自宅や老人ホームへ出向いて行う、さまざまな医療行為」を指します。対象は「病気やけがのため、一人での通院が困難な方」です。
 具体的には、足腰が不自由な方、認知症や寝たきりの方、ターミナルケア(治療による延命よりも、病気の症状などによる苦痛や不快感を緩和し、自宅での最期の時間を充実させるためのケア)を希望する方です。
 在宅医療の最大の長所は「患者さんが住み慣れた環境で生活を続けながら、医療行為を受けられる」ことです。我が家で家族やペットとの時間を持ち、自分のベッド、布団、テレビの音量、外の景色、家の匂いなど、慣れ親しんだものに囲まれながら医療を継続でき、最期まで過ごすことができるのは、在宅医療ならではの良さといえます。
 一方、短所として「介護者の負担」が挙げられます。介護する家族の協力があってこそ、在宅医療は成り立ちます。しかし、患者さんが自宅で生活を行う上で、さまざまな問題が発生する可能性があり、その分、介護者の負担が増えてしまいます。
 このような場面で活躍するのが、ケアマネージャー(介護支援専門員)、医療ソーシャルワーカーやヘルパー(訪問介護員)などの方たちです。介護保険サービスや、実際の介護サポートなど、在宅医療に不可欠な環境調整を行います。
 在宅医療という選択肢を医療者だけでなく、患者さんやその家族と共有しておくことが重要です。在宅医療は、医師や看護師だけでは完結しません。
 患者さんや家族を中心として、地域の多職種がチーム一丸となり、安心した暮らしをサポートすることが「真の在宅医療」であると考えています。
 また、自宅で安心して療養を続けるためには、万が一のときの入院にも備える必要があり、地域病院の協力も必須です。
 今後も、指宿地域全体で連携を行うことで、患者さんや家族がより安心した暮らしを送ることができ指宿が本当に「安心して暮らせる地域」になることを願っています。