赤崎病院 赤崎 安宣
日本では、毎年約10万人以上の人が大腸がんと診断され、4万人以上の人が命を落としています。
ところで女性のがん死亡数で最も多いのは、大腸がんであることをご存じですか?乳がんや子宮がんでは?と思われるかもしれませんが、大腸がんの死亡数は年々増加しており、50年前と比べると10倍以上になっています。国立がん研究センター(人口動態統計)によると2018年の男性のがん死亡数は、1位肺がん、2位胃がん、3位大腸がんに対して、女性は1位が大腸がんなのです。乳がんは5位で子宮がんは7位です。それではなぜ女性は大腸がんの死亡数が多いのでしょうか?
大腸がんが進行すると便秘症状が出現しやすくなりますが、女性は若い頃から6割が便秘症で悩んでいるといわれており、その半数は何の対応もせず放置しているようです。家事や仕事などで排便のタイミングを逃すことで便秘になりやすくなり腸内環境が悪化してしまい、大腸がんのリスクとなっているのではないかといわれています。
大腸がんは早期発見により完治しやすいにもかかわらず、死亡率が高いのは発見の遅れにあります。大腸がん発見のために大腸がん検診(便潜血検査)がありますが、残念ながら女性の大腸がん検診受診率は、男性より少ないのが現状です。国民生活基礎調査によると、大腸がん検診の40~69歳の受診率は、男性は44.5%、女性は38.5%で女性が少ないのです。便潜血検査で陽性で あった場合、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で、がんの有無を確かめますが、その検査を受ける人の割合は6割程度です。女性の多くは、肛門から内視鏡を入れる検査は恥ずかしいから…とか、痔だから…とためらいがちです。そのため症状があっても検査を受けず、発見が遅れることが多いと考えられます 。
大腸がんの中でも、肛門に近い腸にできる直腸がんやS状結腸がんの場合は、血便や便秘などの症状が比較的早く出やすく早期に見つかることもありますが、盲腸・上行結腸・横行結腸など肛門から離れた右側の腸は腸管が太く便も軟らかい状態のため、がんが進行しても症状が出にくく、女性の場合は右側の腸にできるがんが多く認められる傾向にあるといわれており、発見が遅れるのではないかと考えられています。
多くの自治体では、40歳以上を対象に年1回、便潜血検査による大腸がん検診を実施しています。便潜血検査は、便に混じった目に見えない血液を見つける検査ですが、必ずしも便潜血陽性にならないがんも存在することがあり、異常がなかったとしても毎年受け続けることが大切です。症状がなくても、あるいはただの便秘や痔だからと思わずに、毎年大腸がん検診を受けて、便潜血検査で陽性と診断されたら、恥ずかしがらずに必ず大腸内視鏡検査を受けて早期発見、完治を目指しましょう。