少々、おセッカイですが、肥満のお話です

福元医院 福元 良英

 これまでBMIは22を標準体重としてきました。これは1991年の日本人を対象とした研究での「BMI22の人が職域健診で異常所見の合計が最も少なかった」という結果に基づいており、今日まで幅広く普及してきました。しかし、BMIと死亡率との関係を調査した最近の研究では、最も死亡率の低いBMIは、アジア人では20~25であり、日本人食事摂取基準版2020年では、目標とするBMIを20~24.9としています。すなわち「BMIが22」は絶対的な標準体重ではなく、20~25の範囲で各個人の状態に合わせた目標体重を設定する方向に変化してきました。
 早食いの人が太りやすいことはよく知られています。1回の食事が10分未満の人は、かなり早食いです。早食いの人は、1回に口に入れる量が多く、あまり噛まずに飲み込んでいます。例えば、コンビニエンスストアで販売しているおにぎり1個(100gあたり180Kcal)を全て食べ終わるまでの時間は、普通の人が4分のところを、早食いの人は半分の2分で食べ終わります。一口で食べる量も1.5倍と大きく、噛む回数は100回も少なかったそうです。あなたは早食いの方ですか?それとも遅い方ですか?
 また、脳が満腹と感じるまでには15~20分以上かかると言われています。ところが、早食いの人は脳が満腹と感じる前に、胃がパンパンに膨らむまで食べ続けます。つまり、「早食い→食べ過ぎ→肥満」となっているのです。そして、内臓脂肪に圧迫されて胃の形が変形してきます。これをナイアガラ瀑布など滝に例えて、「瀑状胃」と呼びます。滝のように食物が胃から腸へ流れ込むため、たくさんの量を食べることができ、すぐお腹が空くのです。
 よく噛むと、三叉神経が刺激され、脳の満腹中枢が活性化します。一口30回噛むことを勧めているダイエット法は、この原理を利用しています。しかし、一口30回噛むというのは意外と大変で面倒です。箸やフォークを持つと、一口30回噛むのを忘れてしまいます。まずは、早食いでない人の横に座って、同じペースで食べてみてください。自分がどれだけ早食いなのか分ります。ゆっくり食べることを習慣付けるため、一度箸を置く、箸置きを使う、左手で食べるなどの方法もあります。
  肥満改善のためにもっとも大事なことは「摂取エネルギー量」と「消費エネルギー量」のバランスを取ることです。そのためには、日々運動を行い、エネルギーを消費して、余分なエネルギーを溜め込まないことが重要です。
 食事制限だけでは、不十分です。お金と一緒で、収支のバランスが大事です。運動のお話はまたの機会に。
 ※BMI・・・体重(kg)を身長(m)の二乗で割った数値