不足しがちな鉄分のお話

上村内科クリニック 上村 徳郎

 健康診断で「貧血なし」「異常なし」と言われても、なんだか体調が悪いと感じたことはないでしょうか。また、健康診断のときに『「基準値」内であれば「異常なし」』と言われたことはないでしょうか。実はこの「基準値」と「実際の正常値・目標値」は一致しているわけではありません。その人が抱える病気などの状態により、目指す値は異なります。
  今回は、「鉄欠乏(貧血)」についてお話しします。 貧血は女性に多く、特に女性は月経があるため、慢性的な鉄欠乏状態になりやすいといえます。その割合は、閉経前の日本人女性の8~9%であり、潜在性鉄欠乏も含めると、その数は約半数にも達するといわれます。原因として、鉄分の含有量が低い食事や摂取カロリーの低さ(ダイエットなど)が指摘されています。
  鉄欠乏が引き起こす症状はさまざまで、頭痛、肩こり、疲れやすさ、抑うつ感などがあり、小児では、注意力の散漫や情緒不安定などがあります。また、氷を食べたがるなどの異食症といわれる症状がでることもあります。
 血液検査では貧血がないと言われても、当てはまる症状はないでしょうか。いろいろ調べても原因不明な症状には、鉄欠乏が潜んでいる可能性があるのです。また、血液検査も見方によっては潜在的な鉄不足を見抜くことができます。それに加えて「中学生の貧血調査で、運動クラブに所属する人は所属しない人に比べ、ヘモグロビン量が低かった」という報告もあります。運動クラブに所属している人は、積極的に検査を受けて確認した方がよいかもしれません。
 鉄の摂取不足を補うためには、鉄剤の内服薬、サプリメントなどがあります。しかし、副作用もあるため、治療中の病気がある人は、かかりつけ医に相談してください。
  今回は鉄についてお話ししましたが、摂取することで利益のある成分は、他にもまだまだあります。例えば、ビタミンDは「インフルエンザA型に対する罹患率(病気の発症の頻度)を6歳~15歳を対象に調査した結果、毎日1200IU(30μg)のビタミンD3を摂取したグループでは、罹患率が低い」という報告があり、ビタミンD補充療法により感染症を予防できる可能性があります。インフルエンザ流行期は受験シーズンと重なっており、勉強の成果を十分に発揮するためにも、ビタミンDを接種することを検討してもよいかもしれません。
 不足する栄養素は基本的に食事で摂取することが大切で、まず食生活を見直す必要があります。それでも不足する場合は、サプリメントを活用しましょう。自分に不足するものが分らない場合は、血液検査で調べられます。健康的な体を手に入れ、個人のパフォーマンスを高めることは、少子化が進む社会に求められることではないでしょうか。