『 大腸がん検診の意義 』

肥後胃腸科クリニック 肥後 平一郎

 国立がんセンターの統計では、2016年にがんで死亡した人は約37万人で、そのうち約5万人が大腸がんで死亡しています。また、男性のがんによる死亡者数の第3位、女性では第1位を大腸がんが占めています。
  近年、日本では大腸がんによる死亡者数が増え続けています。原因として考えられるのは、食事の欧米化(赤身の肉、動物性脂肪など)やたばこ、アルコールなどが考えられます。もちろん遺伝的な要因もありますが、生活環境の変化が主な原因と考えられます。
 指宿市では、特定健診の時期に大腸がん検診として便潜血反応検査を行っています。 この検査は免疫学的便潜血反応検査といって、ヒトヘモグロビン特異抗体を用いてふん便中の血液の混入を判定します。微量のヘモグロビンでも検出可能で、ヒト以外の動物由来のヘモグロビンには反応しません。
 また、大腸以外の食道、胃、小腸、膵臓などからの出血は(多量でなければ)胃液やその他の消化液などでヘモグロビンが変性して抗原性が失われて陰性になります。このような特性から、便潜血反応は大腸がんの検診に向いているといえます。
 大腸の進行がんの90%、早期がんの約50%が検出可能といわれています。 便潜血反応検査を受けることで、大腸がんの死亡率が15~33%低下するとの報告があります。便潜血反応検査を受けて、陽性の人でがんが見つかるのはわずか1%~3%ですが、2回とも陰性なら、がんでない確率が95%以上あるといわれます。しかし、残りの約5%の人はがんがあるのに陰性と出る、偽陰性の危険も残されています。
 毎年受けることで、この偽陰性の確率も減っていきます。大腸がん検診としては、優れた検査だということがいえます。もちろん、大腸内視鏡やCT、バリウムによる大腸エックス線検査などもありますが、手間と時間がかかり、毎年受けるのは大変です。
 まずは、毎年便潜血検査を受けて陽性なら精密検査(内視鏡など)を必ず受けるようにしましょう。
 そして日頃心掛けたいのは、和食中心で繊維の多い野菜類をよく食べるようにして、禁煙して、アルコールは飲みすぎないようにすることで、大腸がんを予防することです。