外村クリニック 外村 慶蔵
小便が出にくいのも困りますが、それより小便が漏れるのはもっと困ります。それを尿失禁といいます。原因はいろいろありますが、まず、いつもだらだらと尿が漏れている人がいます。生まれつき尿管口が膀胱に開かず、膣などに開いている場合や、子宮がんで放射線治療を受けて、膀胱と膣に穴が開いた場合などです。治療としては、手術以外にありません。
次に、小便をしたくなったとき我慢できずに漏れることがあります。膀胱炎でも起こることがありますが、排尿痛もなく、尿検査も異常がないのに起こることもあります。最近よくテレビのコマーシャルで見る過活動膀胱がその一つです。これは膀胱が過敏になった状態で、女性に多く見られますが、男性でも前立腺肥大に伴ってみられることがあります。 また、脳血管障害やパーキンソン病などの脳の障害がある時も見られます。これには、膀胱の収縮を抑える薬があり、よく効きます。こういう人の中には脳梗塞予防のためにと水分を取り過ぎていることがあります。小便で困る人は水分不足ということはありませんので、当然、水分を控えることが重要です。
また、脊髄損傷でも尿失禁を起こすことがあり、この場合は小便をしたいと感じないのに尿が反射的にもれてしまいます。薬は先に書いたのと同じです。 逆に尿が出にくくて、膀胱内が尿でいっぱいになり、あふれ出る尿失禁もあります。糖尿病などによる神経障害で膀胱の働きが悪くなったり、前立腺肥大で尿道が圧迫されたりした場合です。尿を出しやすくする薬もありますが、腎臓まで腫れていることもあり、自分で管を膀胱内に入れて尿を出したり、前立腺を内視鏡で削ったりする必要もあります。 もう一つよくある尿失禁として、お腹に力が入ったときに起こることがあります。くしゃみやせきをしたり、重いものを持ったり、走ったり、ひどい人は歩くだけでも起こる人がいます。これは尿道や肛門の括約筋が緩んでいるためです。原因はお産や太り過ぎです。治療薬もありますが、括約筋を5秒間締めて鍛えることが最も効果があります。ただし、少なくとも毎日半年間は継続する必要があります。それと間食は止めて体重を落とすことも重要です。
尿が漏れるのは年だから仕方がないとか、相談するのも恥ずかしいからとか考えず、まず病院で相談してみて下さい。