『 CTとMRIの違いについて 』

指宿さがら病院 馬ノ段 智一

  CT(コンピューター断層撮影装置)とMRI(磁気共鳴画像装置)、実際に検査を受けたことがある人もいらっしゃるのではないでしょうか。どちらもリング状の装置で体の断面を撮影するものですが、違いについてはよく分からない方がほとんどだと思います。今回はCTとMRIの原理や特色、使い分けを簡単に説明します。
 CTは、レントゲン写真と同様にエックス線を用いて撮影するもので、多方向からのデータをコンピューターで処理し、断面の画像に置き換えます。画像は基本的に白黒で、白く写る部分と黒く写る部分の違いはエックス線を通しやすいかどうかで決まります。カルシウムの多い骨などはエックス線を通しにくいため白く写り、空気の多い肺などは黒く写ります。 検査時間が短いのが利点の1つで、最新の装置では胸部から骨盤までを1mm以下の断面で撮影するのに十数秒しかかかりません。放射線被ばくがあるのが欠点ですが最新の装置では劇的に減少しています。
 MRIは、強力な磁場を用いて撮影します。強力な磁場の中で電波を照射すると、体の中の水素原子の動きがそろったりバラバラになったり色々な振る舞いをします。水の中や脂肪の中など、環境次第で振る舞いが異なるので、それを利用して画像に置き換えます。MRIも基本的に白黒画像ですが、磁場と電波の使い方次第で、白く写る部分と黒く写る部分が決まります。また、エックス線を用いないため放射線被ばくがありません。さまざまな組み合わせの検査を複数回行うため、検査時間は、数十分かかります。その他、音がうるさい、動きに弱い、ペースメーカーなど磁性体を持ち込めないという欠点があります。またCTと違って広範囲の撮影には向きません。
 では、この2つの検査はどのように使い分けられているのでしょうか。 MRIが有用な代表として、急性期脳梗塞があります。発症して間もない脳梗塞はCTでは診断できませんが、MRIでは診断できます。同時に脳血管に大きな詰まりがないか探すこともできます。その他、CTで見えない胆石が見えたり、脊椎圧迫骨折の新旧を判断したりもできます。認知症の診断補助にも利用されます。一方、肺炎や肺がんなど空気の中の検査にはCTが向いています。胃や大腸といった消化管の状態把握にも、CTが向いています。これらはほんの一例ですが、CTとMRIに優劣はなく、それぞれの特色を生かし、適した検査が選択されています。病状によっては、両方の検査が必要な場合もあります。
 いかがだったでしょうか。全ては書き尽くせませんが、CTとMRIの疑問解消に少しでもお役にたてば幸いです。