生駒外科医院 生駒 明
急におなかが痛くなる病気はたくさんありますが、中には生命をおびやかすような重症のものもあります。今回は、そのような重大なおなかの痛みについて紹介します。
おなかの痛みを起こす病気の中には、急いで手術をしなければならないものがあります。重症のサインとしては、おなかの痛みが非常に激烈である、痛みが急激に強くなる、歩行などの振動でおなかの痛みが強くなるのでゆっくりとしか歩くことができない、おなかがカチカチに硬くなるなどの症状が挙げられます。このような症状がある場合は、我慢して様子を見ることなく、なるべく早く医療機関を受診してください。
このような急を要する病気として、消化管穿孔（胃・十二指腸や大腸が破れて、胃液や便がおなかの中にもれて重症の腹膜炎を起こすもの）、急性虫垂炎（虫垂が化膿するもの）、急性胆のう炎（胆のうが化膿するもの）、急性膵炎（膵臓が溶けるもの）、絞扼性腸閉塞（腸がねじれて腸への血流がなくなるもの）、腹部大動脈瘤破裂（大動脈がこぶのように太くなり破れて大出血するもの）、子宮外妊娠破裂（卵管などで妊娠し大出血を起こすもの）、卵巣嚢腫茎捻転（卵巣にできた大きな袋が重みで回転して、血管がねじれて卵巣への血流がなくなるもの）などが挙げられます。
胃・十二指腸や大腸が破れると、大量の細菌がおなかの中にばらまかれ、重症の感染を起こします。細菌の毒素が全身を回り、多くの臓器が破壊されます。早く手術して破れた部位を修復し、汚染されたおなかの中を洗う必要があります。
急性虫垂炎や急性胆のう炎では、化膿した虫垂、胆のうなどを、手術で取り除くことによって治ります。
絞扼性腸閉塞では、手術して腸のねじれをほどくと、腸が腐らずにすむこともあります。
急性腸間膜虚血症では、血管がつまり腸は部分的に死んでしまうので、手術で死んだ腸を取り除く必要があります。
大動脈瘤破裂では、大出血で手術が間に合わないこともありますが、手術で破れた動脈瘤を人工血管に置き換えることができる場合もあります。
これらの急におなかが痛くなる病気は、大部分は指宿市内の医療機関で対処できるものですが、一部鹿児島市内への救急搬送を要するものもあります。おなかの痛みが激烈で、歩行などの振動で痛みが増す場合は、緊急手術を要する場合もありますので早めに医療機関に相談ください。
