指宿虫?

宇宿ひふ科クリニック 宇宿 一成

 指宿市は畑作農業が盛んです。私が当地に来た頃から、ときどき「指宿虫にやられた」とおっしゃる患者さんが来られます。もちろんですが、そのような名前の虫はいませんから、何らかの虫による皮膚炎だということになります。来られる患者さんの症状も、みな一様ではないので、いくつかの虫による症状をまとめて「指宿虫」と呼び習わしているのかもしれません。 アオバアリガタハネカクシやマメハンミョウといった虫が、指宿虫の候補選手です。それでは虫の生態と皮膚炎の症状を見ていきましょう。
●アオバアリガタハネカクシ
  長い名前ですが、青い羽で、アリみたいな形をして、羽を隠している、という虫の姿が名前の由来です。ちなみに、学名は長いラテン語ですが、日本語に直すと、「色が汚く不潔なチンピラ」という意味になります。きっと昔からあまり人に好かれていない虫なのでしょうね。 成虫の体長は6.5~7.5㎜。成虫の活動のピークは6~7月ですが、越冬するので一年中見られます。水田周囲、畑地で出会うことが多く、夏には灯火に飛来します。飛んできた虫を手で払うと、体液が分泌され人の肌につくことになります。ぺデリンという体液の成分が肌に触れると、赤みが現れ小さな水ぶくれや膿をためたブツブツができ、かゆみや痛みを起こします。
●マメハンミョウ
 ハンミョウの仲間で、美しくて、どうもうな肉食の昆虫です。安部公房の代表作「砂の女」は、未発見のハンミョウを探して昆虫マニアの主人公が失踪する小説でした。 成虫の体長は12~17㎜。頭部は赤色で、体の大部分は黒っぽく、羽に2本の縦線があります。マメ科植物の栽培地や休耕田で出会うことが多く、捕まえると体節から黄色い体液を分泌します。体液にはカンタリジンという物質が含まれていて、これが肌につくと、赤くなって水ぶくれができます。比較的浅い水ぶくれで、簡単に破れてびらんになります。痛みとかゆみが出てきます。
 
 ほかにカミキリモドキも同じ毒を含む体液を出し、同じような症状が出ますが、山林や森林で出会うことが多い虫です。 このような虫による症状が出たら、皮膚科を受診してください。