風疹について

肥後内科クリニック 肥後 高春

 最近「風疹に気を付けてください」と聞くことがあるかもしれません。そもそも、風疹とはどのようなもので、なぜ気を付ける必要があるのでしょうか。

【風疹ウイルス】
 風疹ウイルスは、半径約2mの人の咳やクシャミから感染します。潜伏期は14日から21日で、発熱と同時に淡紅色の発疹が出現し、顔面から全身へ広がります。発疹出現1週間前から、後頸部や耳介後部、後頭部にリンパ節の腫れも出現します。思春期以降の女性には、関節炎が出ることもあります。通常は1週間以内に症状が軽減しますが、まれに合併症として、血小板減少性紫斑病(3,000人に1人)や急性脳症(6,000人に1人)を引き起こします。

【先天性風疹症候群】
 風疹で最も気を付けるべきなのが、先天性風疹症候群です。妊娠中の母親が風疹に感染すると胎児も感染し、難聴や目の障害(白内障、網膜症、緑内障)、先天性心疾患、小頭症、精神遅滞など、重篤な障害になることがあります。2012年から2014年の流行で、同症候群の子が、国内で45人生まれていますが、11人が亡くなっています。命をとりとめたとしても、障害とともに生活をしなければなりません。

【 風疹の検査】
 もし、風疹にかかったと感じた時は、最寄りの医療機関を受診してください。咽頭ぬぐい液や血液、尿を採取し、病原体検査をします。結果、もしかかっていたとしても、通常は数日で回復します。重要なのは、他の人にうつさないことです。現在、県内では成人の風疹抗体検査無料化や、風疹予防接種費用の助成があります。抗体検査の対象は、①妊娠を希望する女性 ②妊娠を希望する女性の配偶者などの同居者 ③抗体価が低い妊婦の配偶者などの同居者です。予防接種費用の補助の対象は、抗体検査をした人で抗体価が十分でない成人です。もちろん、それ以外の人も実費での検査は可能です。

【 予防接種 】
 現在、MRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)の定期予防接種が2回行われていますが、受けているのは現在29歳未満の人です。29歳以上の人は、2回予防接種を受ける機会がありませんでした。29歳から39歳の人は、幼児期や中学生のときに、医療機関で個別接種の機会が1回ありましたが、1回の接種では十分な免疫を獲得できないことがあります。40歳以上の人は、1回も接種していない可能性が高いのです。さらに、県内のMRワクチンの接種率は、全国平均よりも低いのが現状です。

 そこで皆様に朗報です。厚生労働省は、2019年の春から職場健診を利用し、抗体検査を受け免疫が十分ではないと判明した人に限り、39歳から56歳の男性を3年間、原則無料の定期予防接種の対象にすると発表しました。風疹・麻疹の予防方法はワクチン以外にありません。これから生まれてくる子どものために、まずは自分たちの事を知ることが大切です。早速、母子手帳を確認しましょう。