新型コロナウイルスとマスクと熱中症

幸南クリニック 松元  渉

 新型コロナウイルス感染症が世界中に伝染し、県内でも11人の感染者が発生しましたが、外出自粛や三蜜を避けるなど、皆さん一人ひとりが手洗い、うがい、三蜜回避の対策で新たな感染者は発生していません。素晴らしいことです(6月22日時点)。
 新型コロナウイルス感染症には、現在のところ有効的な治療方法は確立されておらず、またインフルエンザウイルスと同様に変異を繰り返すため、引き続き感染予防対策のマスクの着用や外出自粛を継続する必要がありますが、これらが熱中症発症のリスクを高める可能性があります。
 人間は、体の表面からの熱放散と呼吸による熱放出で体温を調整していますが、マスクに温かい息がこもって熱放散ができず、また、その温かい息を吸ってしまうことで熱放出もできません。ウイルスの侵入を防ぐ高気密のマスクほど体内冷却が妨げられるという訳です。 この夏は、これまで以上に熱中症予防に努める必要があるのです。
 熱中症の症状は、次の3つの段階に分けられます。
■Ⅰ度:現場での応急処置で対応できる軽症
 ・立ちくらみ(熱失神) ・筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り など) ・大量の発汗
■Ⅱ度:医療機関への搬送を必要とする中等症
 ・頭痛、気分不良、吐き気、倦怠感、虚脱感 ・体がぐったりする、力が入らない など
■Ⅲ度:入院して集中治療の必要性のある重症
  ・意識障害、けいれん、手足の運動障害 ・高体温(汗が出なくても体が熱い)
  熱中症は、気温が高く湿度が高い場所、風通しが悪い場所、照り返しが強い場所などで起こりやすくなります。家の中や日陰だからといって安心できません。室温や湿度の高い部屋に長くいると熱中症にかかる危険性があります(室内型熱中症)。また、浴室やトイレ、寝室など家庭内の風通しの悪い室内でもおこりやすくなります。
≪熱中症が疑われる時の応急処置≫
①直ちに涼しい場所へ移動・搬送する。 ②衣類を緩め、うちわや扇風機であおぎ、氷嚢で首や脇の下、太ももの付け根を冷やす。 ③経口補水液やスポーツ飲料などを補給する。 ④意識がない場合や呼び掛けに対する返事がおかしい場合、吐き気や嘔吐の症状がある場合は、 すぐにかかりつけ医や救急医療機関を受診する。
≪熱中症の予防策≫
①暑さを避ける。(外出時は帽子や日傘を使い、室内ではエアコンなどで室温・湿度を調整する)。  ②こまめに水分を補給する。 ③十分な睡眠や休養・栄養を取り体力の回復を図る。 ④日頃から暑さに体を慣らしておく。(発汗を促す習慣を身に付ける)。
 市民の皆さんが新型コロナウイルスにも熱中症にも負けず、元気で健やかに今年の夏を乗り切れますように祈っています。