『 睡眠について 』

西田病院  西田 佳晃

新型コロナウイルス感染症の流行が長期化し、ストレスフルな日々を送っている人が多いかと思います。そのような中、睡眠で困っている人はいらっしゃいませんでしょうか。日本人では5人に1人が不眠という調査もあります。不眠の原因としては心理的ストレスや環境変化、身体疾患などさまざまなものが挙げられます。睡眠時間については6〜8時間程度の睡眠の人が生活習慣病やうつ病などのリスクが少ないとされています。しかし、高齢者は睡眠時間が短くなり、例えば65歳では6時間程度になります。不眠症の診断には寝られないことに加えて、日中に何らかの問題が無いかが重要です。日中の活動に問題が無ければ、多少は睡眠時間が短くてもそれほど気にしないでいいでしょう。時々、不眠を訴える高齢の人で「5時間程度しか寝られない」と話すものの、日中は問題なく生活できている人がいます。そのような場合にはお薬などの治療は行わずにそのまま経過を診ることもあります。

不眠の治療というと、薬を飲むイメージを持たれる人が多いかもしれませんが、薬を飲む以外にも気を付けられることはたくさんあります。例えば、日中に太陽の光を浴びる、朝食を食べる、寝る前に刺激になる行動を控えることなどが大切です。朝食は体内時計をリセットする働きがあります。朝は何も食べないという人もいますが、睡眠の観点からはちょっとしたものでも朝に食べることが大切です。太陽の光も体内時計を整えてくれます。 また、寝る前には刺激物の摂取は避けましょう。日本人では寝られない時に寝酒をする人が多いですが、寝酒については慣れから量が増えやすい、睡眠の質を悪くするといった理由からおすすめできません。ホットミルクなど体が温まる飲み物がおすすめです。さらに、最近ではスマホを夜遅くまで見てしまい、その後なかなか寝付けないという人も多いです。スマホ類は使用時間を守るなど上手に付き合いましょう。

厚生労働省は「健康づくりのための睡眠指針2014」で、睡眠12箇条を示しています。

不眠のある人は睡眠の妨げになる行動をとっていないかいま一度見直してみてはいかがでしょうか。また、人によっては身体的問題、うつなどの心の問題で不眠が生じている人もいます。少しでも体調面に不安がある場合には早めに専門家に相談をされてください。

何かと不便の多い今日ですが、体調には十分お気をつけてお過ごしください。

~睡眠12箇条~

1.良い睡眠で、からだもこころも健康に。

2.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。

3.良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。

4.睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。

5.年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。

6.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。

7.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。

8.勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。

9.熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。

10.眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。

11.いつもと違う睡眠には、要注意。

12.眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。

(厚生労働省健康局は「健康づくりのための睡眠指針2014」より)