肥後胃腸科クリニック 肥後 平一郎
人類の起源となる生物が誕生して約1億年になります。その間生き残りをかけて、人類にとって有害な細菌やウイルス、がんとの戦いが続いてきました。人の体の中にはそれらから身を守るための免疫システムが長い時間をかけてつくられてきました。人の体にとって有害なものが接触すると、まず皮膚や粘膜が第一の砦になり防御します。それが破られて侵入されると食細胞やリンパ球などが戦い、その情報がリンパ球を変化させて抗体をつくり出します。
しかもその情報は記憶されていて、次に同様の物が侵入しようとしたとき、抗体がすぐにつくられて攻撃します。また免疫反応が自分や胎児、有益な常在菌(善玉菌)などを攻撃しないように、免疫寛容といって、それらに対しての免疫を弱める働きもあります。
この免疫バランスを保ちながら長い歴史の中で人類にとって有益となるようなシステムに少しずつ進化してきたと考えられます。そして、がんや感染症、免疫の病気などは、この免疫システムのアンバランスから発症することが分かってきています。
今現在ある病気の大半は、この免疫システムのアンバランスからおこるといっても過言ではありません。この免疫システムを使ったがんの薬やリウマチなどの免疫病によく効く薬、ワクチンなどが開発されましたが、副作用も強くまだまだ課題が多いのが現状です。免疫システムは、まだほんの少ししか解明されていない奥深いシステムなのです。免疫力のバランスを保つことが非常に重要であることは間違いありません。
では、免疫力のバランスを保つためにはどうしたらよいのでしょうか。まずストレスをためすぎないことです。適度なストレスは日常生活に必要といわれていますが、過度のストレスは活性酸素を増やして、体の細胞や遺伝子を傷つけます。
また、老化を早めてがん化しやすくなり、免疫のバランスも崩します。無理な仕事はせず、適度な運動や趣味を生かすことでストレスの発散を心掛けましょう。
食事では塩分や糖分は控えめにして野菜を多く取りましょう。食物繊維やビタミン類をよく取ることも大切です。たばこは吸わず、アルコールは飲み過ぎない、睡眠を十分に取って気を高め、元気を出しましょう。これが免疫力を高め、バランスを保つ秘訣といえます。このように免疫は人間が生きていく上で欠かせない大事なシステムです。
薬やワクチンに頼る前に自分の免疫力を高め、バランスを整えるように心掛けましょう。