北薗産婦人科クリニック 北薗 正大
更年期とは閉経前後の数年間のことで、この時期は女性ホルモンの減少により、いろいろな心身の変化が起こります。その変化に対応できず、日常生活に支障をきたす状態を更年期障害といいます。
更年期障害の原因は主として女性ホルモン、特にエストロゲンの低下ですが、症状には個人差があり、社会的環境や本人の性格などの心理的要因も大きく影響します。
女性ホルモンは体のいろいろな場所に働いているため、症状も多彩です。よくみられるのは、のぼせ、発汗、喉のつまり感、食欲不振、肩凝り、頭痛、動悸・息切れ、イライラ、不安不眠などです。程度も人によってさまざまで、中には外に出たくない、人に会いたくない、やる気がでないなど「うつ」 のような症状が強く出ることもあります。
更年期障害では検査でも体に異常が見られないため周囲から理解されず、甘えや怠けであると思われたり、心療内科への受診を勧められたりすることもあり、本人にとってつらい状況となります。
治療では、まずホルモン補充療法があります。これは閉経で減少したホルモンを外から補ってあげる治療で、錠剤、注射、テープ、ゲル剤があります。ホルモン状態が閉経前くらいになるため、症状の改善が早く、効果も良好で、骨粗しょう症の予防、動脈硬化の進行抑制、性交時の痛みの緩和、おりものの減少にも有効です。ただし、ホルモン薬には副作用もあり注意が必要です。重要な副作用は血管内で血液が固まり、固まった血液が肺や脳に詰まり、肺梗塞や脳梗塞を起こすことと、長期間連続して(5年以上)使用すると、子宮体部がんや乳がんのリスクがいくらか上昇すると言われていることです。しかし更年期障害がひどく、日常生活が困難な場合にはとても有効な治療です。注意深く使用すれば、それ程問題になる事はありません。
次に漢方薬による治療ですが、更年期障害と漢方治療は非常に相性が良く、漢方薬だけでも十分な効果を得られることも多いです。一般的に漢方薬は長期間使わないと効果が出ないと思われていますが、その薬が現在の体の状態と合っていれば、すぐに効果が出てきます。また、思いがけない部位に思いがけない効果が出てくる場合もあります。その他プラセンタやある種のサプリメントも有効な場合があります。大事なのは、その人の状態に合った治療をするということです。
更年期の過ごし方で大事なことは、規則正しい生活をおくり、趣味やサークル活動で気分転換を図り、必要以上に自分の心身について心配しすぎないことです。自分の現在の状況を受け入れて、平穏な毎日を過ごしていきましょう。