『 エックス線検査と放射線被ばくについて 』

指宿さがら病院  馬ノ段 智一

病院や健診で、レントゲンやCTなどのエックス線検査を受けたことがある人は多いと思います。病状によっては撮影枚数が多くなったり、定期的に撮影が必要だったりして、放射線被ばくを心配される人もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、医療に伴って受ける放射線被ばく、すなわち医療被ばくについて説明したいと思います。

医療被ばくの説明の前に、常日頃私たちは自然界からの放射線被ばくを受けていることをご存じでしょうか。被ばく線量の単位はシーベルト(Sv)で表されますが、大地や宇宙などからの自然放射線で、日本人一人当たり平均1.5mSv被ばくしているといわれています。世界平均では2.4mSvです。

また、飛行機でニューヨークまで一往復すると、飛行高度による宇宙線の増加で約0.2mSv被ばくします。何もしなくても、私たちは常に被ばくしているということになります。

それでは、レントゲンやCTでの被ばくはどのくらいでしょうか。最も一般的な胸部単純レントゲン写真で0.05mSv、胸部CTで7mSvくらいです。毎月胸部レントゲン写真を撮影した場合、年間0.6mSv、3カ月に1回CTを撮影したら4回で年間28mSvですが、実際は単純な足し算にはならず、もっと少ない被ばく量になります。

では、どのくらいの被ばく線量で健康に影響があるのでしょうか。部位ごとに影響が異なりますが、大人の全身被ばくで1回に200mSv、胎児で1回に100mSv以下であれば、影響がないといわれています。エックス線検査での被ばく量はそれに比べて非常に小さいことが分かります。さらに最近は検査機器の性能が向上し、特にCTは進歩が著しく、少ない被ばく量で精細な画像が得られるようになっています。

いかがでしょうか。病院や健診で行われるエックス線検査で、健康に影響が出るような被ばく量になることはまずありません。被ばくを怖がって必要な検査を受けないことは、むしろ病気を見逃すリスクにつながりますので、安心して検査を受けていただきたいと思います。